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ペ ッ イ ー 〜 ビ ル マ 紅 茶 の 奥 義 〜
■紅茶にうるさいビルマ人
ビルマで最もポピュラーな飲物といえば、やはり紅茶でしょう。ビルマ語では「ラペッイー」といいます。ちょっとした町ならば、どこにでも喫茶店(ラペッイー・ザイン)はあります。ビルマ人の喫茶店好きは、名古屋人を越えるでしょう。店構えは屋内式から路上式までいろいろありますが、どこの店も客の入りは結構いいようです。
さて、ちゃぶ台と極端に低い腰掛けだけの路上喫茶店にでも行って、ビルマ語で一杯注文してみましょうか。
「ラペッイー・タクウェッ(紅茶を一杯)!」
二杯なら「ナクウェッ」、三杯なら「トォングウェッ」となります。「クウェッ」は「〜杯」に当たる助数詞。前に来る数字の発音によって濁音化するところなどは、日本語と同じです。
このラペッイー、まず飲んで感じるのはその甘さ。とにかく甘い。しかし、ただそれだけではありません。喫茶店にはコーヒーやジュースなどもありますが、ビルマ人にとっての定番は、何といってもラペッイーなのです。定番に“こだわり派”は付きもの。甘さ苦さの微妙な違いにうるさい人がいれば、それに応じた多岐に渡る注文方法がある筈です。
■ラペッイーの注文方法
ラペッイーは「シンプル」と「スペシャル」とに大別することができ、いずれの場合においても甘味とまろやかさをつけるために、砂糖と練乳が使われます。ミルク入りは、メニューとしては存在しますが、基本的な調合ではありません。なお、「シンプル」はビルマ語で「ヨーヨー」といい、「スペシャル」は語尾の「シャル」がビルマ語化して「シェー」といいます。
「ヨーヨー」と「シェー」の違いは、使われる練乳にあり、「ヨーヨー」ではその店の自家製練乳が、「シェー」では輸入品の缶練乳が使われます。注文の際、特に指定しなければ、通常「ヨーヨー」が出されますが、客が外国人の場合には「シェー」となることもあります。その理由については、「金を持っている外国人だからふっかける」といった一般的に考えられがちな発想のみで判断することはできません。もちろん一概に言えることではありませんが、「自家製の練乳を入れると腹をこわしてしまうかもしれない」といった配慮で、外国人にはあえて「シェー」を出す店が少なくないのです。
また「ヨーヨー」と「シェー」には、実際の飲み方にも違いがあります。「ヨーヨー」の方は、ふたつのカップを使って泡立つほどよく混ぜられている(右の写真参照)のでそのまま飲みます。しかし高価な「シェー」の方は、練乳が沈殿した状態で出てきます。こうすることで偽「シェー」でないことが示され、こちらは自分で混ぜる形となります。つまり自分で甘さの調節ができるわけで、甘さを抑えたければ、あまり混ぜなければいいのです。
さて、注文の仕方としては、「ヨーヨー」か「シェー」かだけではなく、さらに甘さ、苦さの微妙な味の違いを指定することができます。そのあたりについては、茶葉、練乳、砂糖をどれだけ使うかといったことなどで決まります。それぞれが標準的な量で調合されたノーマル・スタイルを「ポンマン」といい、注文する時、調合についての指定をせず、単に「ラペッイー」と言った場合には、これが出てきます。
まずはラペッイーの入門編として、この「ポンマン」を飲むことをお勧めします。その味をどう感じるかで、その先のさらに細かい注文方法が決まってきます。「ポンマン」はノーマルとはいえ、日本人にはかなり甘く感じるようですから、その場合には、次から甘さを抑えたものか、苦味を強くしたものを注文するのがいいでしょう。参考として、さまざまな注文方法のうちから、そのほんの一例を列挙します。
●最も甘い「チョービィッ」
●甘さが強い「チョーゼインッ」
●甘さも苦さも強い「チョーヂャ」
●ビルマ基準で普通の甘さの「ポンマン」
●甘さ抑え目の「チョーボ」
●苦味の強い「ポヂャ」
■どのラペッイーが好き?
このようにいろいろ列挙してみましたが、当のビルマ人の間で人気のあるラペッイーはどれなのでしょう。ヤンゴン、バガン、メイッティラーで尋ねてみました。
アニャーといわれる上ビルマ地方のバガンやメイッティラーと首都ヤンゴンとでは、傾向的な違いがやや見られましたが、共通して一番人気だったのが「チョーゼインッ」。その他、「チョーボ」も人気がありました。違いは、ヤンゴンと比べてアニャーでは「チョービィッ」の人気が高いという点。甘いものを好むこの地方の特徴があらわれているようです。
ちなみにラペッイーというのは、店で飲むだけではなく、買って家で飲むものでもあります。したがって、どの店でも袋に入れての持ち帰りが可能です。こうしたテイクアウトのことを「パーセー」(小包みを意味する英語の「Parcel」が語源)といい、飲食関係の用語となっています。この場合の値段は、量が通常の1.5〜2倍近くなので、その分高めとなります。
なお値段的なところでの種類としては、大カップと小カップという具合に分けている店もあります。
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ラペッイー通のビルマ人は、自分の好みの店で飲むと同時に、好みに合うように細かく注文します。その仕方は、地方、あるいは店や個人によってもさまざまで、今回ここで列挙した注文方法だけでは到底網羅できるものではありません。つまり、行きつけの店で、自分の好みに応じた特別な調合の一杯を注文できるのがビルマの喫茶店。味にうるさい通の要望に応えられる、というのも「美味い店」といわれる条件のひとつでもあるようです。
written by
落合清司さん
photo by 落合清司さん
web 『バダウ』
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